ギャッベの歴史について
The History of Gabbeh

実はギャッベがいつ誕生したのか、正直なところ正確な年代は分かっていません。
イランでは古くから絨毯を織る文化が発達しており、ギャッベもイラン西部から南西部にかけて暮らす遊牧民たちの生活の中で受け継がれてきたと考えられています。
分かる範囲で時系列にしてご紹介します。
16世紀|「ギャッベ」の名称が文献に登場
現在確認されている「ギャッベ」に関する古い記録のひとつが、16世紀のサファヴィー朝・タフマースブ1世の時代に残された文書です。
少なくともこの時代には「ギャッベ」と呼ばれる敷物が存在していたことが確認されています。
~20世紀前半|遊牧民の暮らしを支える生活道具
ギャッベは長い間、販売を目的とした商品ではなく、遊牧民が自分たちで使用するための生活道具として織られてきました。
羊毛を使った厚みのある絨毯は、テントの中に敷く敷物としてだけでなく、長い毛足を生かして寝具のようにも使われていました。
織り手は身近な自然や動物、遊牧生活の風景などをデザインに取り入れ、母から娘へと織りの技術を受け継いできました。
1980~1990年代|生活道具から世界へ向けた絨毯へ。欧米でギャッベが再評価される
大きな転機となったのが1980年代です。
それまで素朴な生活用品として扱われてきたギャッベに、欧米の絨毯コレクターたちが注目するようになります。
最大のきっかけは、イランの絨毯商であるゴラムレザ・ゾランヴァリ(Gholamreza Zollanvari)氏の功績です。
ゾランヴァリ氏は南部の遊牧民から集めたギャッベをスイスやドイツなど、ヨーロッパの絨毯見本市へと持ち込みました。
広い色面を生かした構図や自由な幾何学模様が、現代美術のミニマリズムなどにも通じるデザインとして評価され、海外での需要が高まっていきました。
あくまで遊牧民の日用品だったギャッベ。当初はサイズがバラバラだったり、水洗いが不十分で衛生面にも課題がありました。
しかし、特有の「下絵のない自由なデザイン」や「草木染め」という素晴らしい個性は絶対に壊さず、
「現代の家でも使いやすいサイズ感」や「丁寧な洗浄・仕上げ」の技術だけを遊牧民に指導することで「商品」としての販路が確立されました。
2010年代|ファールス地方の絨毯織りがユネスコ無形文化遺産に
2010年には、イラン南西部・ファールス地方に伝わる伝統的な絨毯織りの技術が、ユネスコ無形文化遺産の代表一覧に登録されました。
現地の羊毛を使い、天然由来の染料で糸を染め、女性たちが下絵を使わずにデザインを考えながら織る技術などが、世代を超えて受け継がれる文化として評価されています。
2020年代(現在)|世界で愛される手織り絨毯へ
遊牧民の暮らしから生まれたギャッベは、現在ではイラン国外にも広まり、世界中の住まいで楽しまれる絨毯となりました。
時代とともに用途やデザインは変化してきましたが、羊毛を使い、人の手で一枚ずつ織り上げる伝統は現在にも受け継がれています。