ギャッベの柄・モチーフ

ギャッベの柄・
モチーフについて

About Gabbeh Patterns and Motifs

ギャッベの柄・モチーフについて

ギャッベには、動物や植物、人、幾何学模様など、さまざまなモチーフが登場します。
代表的なのが、羊やヤギなどの動物、木を思わせるモチーフ、四角形などのシンプルな幾何学模様です。
こうしたデザインは、織り手たちが日々の暮らしの中で目にしてきた自然や動物、生活風景などから着想を得たものです。

細かな文様を規則正しく配置するのではなく、広い色面の中に小さな動物や木がぽつんと描かれていることもあり、この余白を生かした大胆なデザインもギャッベらしさのひとつです。

生命の木|成長や生命を象徴するモチーフ

生命の木

ギャッベを代表する柄のひとつが、枝を伸ばした一本の木を描いた「生命の木」です。
厳しい自然環境の中で暮らしてきた遊牧民にとって、木は生命や成長を感じさせる身近な存在でした。
そのため生命の木には、長寿や健康、成長などへの願いを表すモチーフとしての意味があると伝えられています。
大きな一本の木を中央に描いたものから、小さな木をいくつも並べたものまで、その表現方法はさまざまです。

羊・ヤギ|遊牧民の暮らしに寄り添う動物

羊・ヤギ

羊やヤギなどの動物も、ギャッベによく登場します。
家畜とともに移動しながら生活してきた遊牧民にとって、羊やヤギは非常に身近な存在です。
羊毛は絨毯を作るための材料となり、家畜そのものも遊牧生活を支える大切な財産でした。
ギャッベでは、数本の線を組み合わせたような素朴な姿で表現されることが多く、一頭ずつ形が違うところにも手織りならではの面白さがあります。

鹿などの動物|自然の中で出会う生き物

鹿などの動物

ギャッベには、鹿を思わせる動物など、遊牧民を取り巻く自然の中の生き物も描かれます。
日本では鹿のモチーフに「家庭円満」などの意味があると紹介されることもあります。
一方で、ギャッベのモチーフには地域や織り手によってさまざまな解釈があり、すべての動物に決められた意味があるとは限りません。
身近な動物を織り手自身の感性で表現したものとして、その素朴な姿を楽しむこともギャッベの魅力です。

ライオン|力強さと勇気を象徴する特別なモチーフ

ライオン

ギャッベの中には、大きな動物が一頭、堂々と描かれた個性的な作品があります。
その正体は「ライオン」。現代の日本でも根強い人気があります。
イランでは古くからライオンが力や勇気、権威を象徴する存在として扱われ、ライオンを主役にした「獅子のギャッベ」も作られてきました。
その姿は、私たちが知るライオンとは少し違います。四角い顔や大きな胴体、人間のような表情など、一枚ごとに非常に個性的です。

かつてギャッベを織っていた女性たちの中には、本物のライオンはもちろん、その姿を描いた絵さえ見たことがない人もいました。
伝え聞いたライオンの姿を想像しながら、自分の感性で糸を結んでいく。
だからこそ、ギャッベには現実には存在しないような、ユーモラスで力強いライオンたちが生まれました。
整った図案を再現するのではなく、織り手の想像力そのものが一枚の絨毯になる。
獅子のギャッベは、そんなギャッベらしさを象徴するデザインのひとつです。

人|家族や暮らしを感じさせるモチーフ

人

両手を広げたような、小さな人の姿が織り込まれているギャッベもあります。
人物は写実的に描かれるのではなく、頭や手足を簡単な線で表したような素朴な形が特徴です。
家族や子どもなど、織り手の身近にいる人々や日々の生活を思わせるデザインとして見ることができます。

四角形・窓|ギャッベでよく見られる幾何学模様

四角形・窓

色の異なる小さな四角形も、ギャッベでよく見かけるモチーフです。
四角形は「窓」を表していると説明されることがあり、幸せや未来への願いと結び付けて紹介されることもあります。
赤や青、黄色など異なる色の四角形を並べたものや、大きな色面の中に小さく配置したものなど、ギャッベらしいアクセントとして使われています。

ひし形|古くから使われてきた幾何学模様

ひし形

ひし形も、遊牧民の絨毯に広く見られる幾何学的なモチーフです。
一つだけ大きく配置されたものから、小さなひし形を連続させたものまで、さまざまなデザインがあります。
複数の線や図形を組み合わせることで、シンプルでありながら力強い表情を生み出します。

ストライプ・縞模様

ストライプ・縞模様

色の異なる羊毛を帯状に織り分けたストライプも、ギャッベで見られるデザインです。
細かな柄を描くものとは異なり、羊毛そのものの色や染色による色彩を大胆に楽しめるのが特徴です。
一つひとつの帯の中にも色の濃淡が現れることがあり、シンプルでありながら手仕事らしい豊かな表情があります。

モチーフの「意味」だけで
なく、一枚の物語を楽しむ

Dyeing wool using natural materials

下絵を使わず、織り手の感性で描く

ギャッベの柄について調べると、「生命の木は長寿」「四角は幸せを呼ぶ窓」など、
それぞれのモチーフに込められた意味が紹介されています。

こうした象徴的な意味を知ることは、ギャッベを楽しむ方法のひとつです。
ただし、すべてのギャッベが決められた意味やルールに従って織られているわけではありません。

伝統的なファールス地方の絨毯織りでは、織り手が下絵を使わず、自らデザインを考えながら、
遊牧生活の風景や身近な自然を絨毯の中に表現してきました。

だからこそ、同じ木や動物でも、その姿は一枚一枚違います。
「この柄にはどんな意味があるのだろう」と想像したり、たくさんのギャッベの中からお気に入りのモチーフを探したりすることも、一点もののギャッベを選ぶ楽しみです。