ギャッベの歴史

ギャッベの産地について

About the regions where Gabbeh rugs are produced

ギャッベの産地について

ギャッベの主な産地は、イラン南西部に連なるザグロス山脈と、その南部に位置するファールス地方です。山岳地帯から草原まで変化に富んだ自然が広がるこの地域では、古くからさまざまな遊牧民が羊や山羊を育てながら暮らしてきました。

なかでもギャッベと深い関わりを持つのが、カシュガイ族とルリ族です。
ギャッベはもともと、彼らが遊牧生活のなかで自分たちのために織っていた敷物でした。
そのため、産地だけでなく、織り手となる民族の生活や文化によっても、色彩や文様、織り方などに異なる特徴が見られます。

ファールス地方・シラーズ周辺

Fars Province – Around Shiraz

ファールス地方・シラーズ周辺

イラン南西部に位置するファールス地方は、現在のギャッベを代表する産地として知られています。
その中心都市がシラーズです。

「シラーズ産ギャッベ」という呼び方から、シラーズの街中に工房が並び、
そこでギャッベが織られている姿を想像するかもしれません。
しかし、ギャッベの文化を育んできたのは、シラーズを中心としたファールス地方の
広い範囲で暮らしてきた遊牧民です。その代表的な存在がカシュガイ族です。

カシュガイ族とは

カシュガイ族は、ファールス地方を中心に暮らしてきた遊牧民の大きな部族連合です。
伝統的には羊や山羊などの家畜を連れ、季節に合わせて高地と低地を移動する生活を営んできました。
羊から採れるウールは衣服や生活道具をつくるための大切な素材であり、
女性たちはそのウールを使って絨毯や袋、テント用品など、生活に必要なさまざまな織物をつくってきました。
ギャッベも、こうした遊牧民の生活から生まれた織物のひとつです。

カシュガイ族が織るギャッベ

カシュガイ族の伝統的なギャッベには、遊牧民ならではの自由な感性が表れています。
都市部でつくられるペルシャ絨毯のように緻密な図案をもとに織るのではなく、織り手自身の感覚によって文様を生み出してきました。
羊や山羊などの動物、木や草花、人の姿、四角形など、遊牧生活のなかで目にするものや、家族への願いを込めたモチーフが素朴に描かれています。
一見するとシンプルでありながら、同じものが二つとない自由な表情こそ、カシュガイ族のギャッベが持つ大きな魅力です。

カシュクリ族と繊細な絨毯

カシュガイ族はひとつの集団ではなく、いくつもの部族によって構成されています。
そのなかでも、優れた絨毯の織り手として知られてきたのがカシュクリ族です。
カシュクリ族の織物には、細かな織りと繊細な文様表現を特徴とするものが見られます。

現在のギャッベにも「カシュクリ」という名称が使われることがあり、一般的なギャッベよりも細かな織りによって、なめらかな質感や繊細なデザインを表現したものがあります。
ギャッベというと「厚く素朴な絨毯」という印象がありますが、そのなかにも織り手たちが培ってきた高度な技術が受け継がれています。

ザグロス山脈

Zagros Mountains

ザグロス山脈

ギャッベの歴史を語るうえで、カシュガイ族と並んで欠かすことのできない存在がルリ族です。
ルリ族は、イラン西部から南西部に連なるザグロス山脈一帯に古くから暮らしてきた人々です。
山岳地帯で羊や山羊を飼育しながら生活し、カシュガイ族と同様に、
身近な羊毛を利用したさまざまな織物をつくってきました。

ルリ族が織るギャッベ

ルリ族が伝統的に織ってきたギャッベには、厚みのある素朴な織りと、大胆で自由なデザインが見られます。
細部まで整えられた文様というよりも、太い線や大きなモチーフ、余白を生かした構図など、織り手の感覚をそのまま表現したような力強さが魅力です。
もともとギャッベは、人に見せるための美術品ではなく、自分たちのテントや住居で使うための実用品でした。
ルリ族の素朴なギャッベには、そうした「暮らしのために織る」というギャッベ本来の姿が色濃く残されています。